顔面神経麻痺
・突然に発症する表情筋麻痺で、閉眼不能や摂食困難など日常生活上の支障に加え、美容の面からもかなりの苦痛がある
・発生頻度は人口10万人当たり30人前後で、男女差はなく、30~40代に多い
一般的な症状
閉眼が困難となり、涙がこぼれ、兎眼となる
鼻唇溝が浅く、頬をふくらませることができなくなる
口角が下垂し、水が漏れ、口笛がふけない
病変が膝神経節に強いと舌前2/3の味覚障害、涙・唾液分泌障害、聴覚過敏、耳痛などを伴う
中枢性
脳橋部にある顔面神経核より中枢で障害されたもの
・下部表情筋や広頚筋が主として影響を受ける
・脳血管障害や脳腫瘍・髄膜炎などによるもので、構音障害や片麻痺・動眼神経麻
痺等を併発する場合がある
末梢性
核またはその末梢側で障害されたもの
ベル麻痺(60~70%)
・急性に発症する一側性の全表情筋麻痺
・明らかな原因がないもの(近年、ウイルス感染説が有力視され、特に単純ヘルペスウイルスⅠ型(HSV-1)は確実視されている)
ラムゼイハント症候群(10~15%)
・水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化により発症
・①外耳道や耳介周辺部の帯状疱疹、②末梢性顔面神経麻痺、③耳鳴・難聴・
めまいの3主徴
・VZVによる髄膜炎を併発することがある
・麻痺の回復はベル麻痺に比べ遅く、後遺症が残ることが多い
成因
HSV-1およびVZVは初感染後、顔面神経膝神経節に潜伏感染し、終生共生するが、背景因子(高血圧・動脈硬化・糖尿病等)や種々の要因(疲労・ストレス・感冒・寒冷暴露・妊娠等)によりウイルスが再活性化され、増殖したウイルスが神経細胞やシュワン細胞に影響を及ぼし、神経炎が生じる
↓
神経炎に続き血管孿縮により、局所の虚血や低酸素状態が惹起され、これによる浮腫・膨化により顔面神経管内において神経が絞扼され、二次的虚血を引き起こし、顔面神経麻痺が発症する
40点法 (柳原法)
健側と患側を比較して明らかな差がない場合を4点、表情筋の筋緊張と運動性の低下がみられるものを2点、それらの消失が認められるものを0点とし、3段階評価にて点数化を行う
・安静時非対称
・片目つぶり
・イーと歯をみせる
・額のしわよせ
・鼻翼を動かす
・口笛
・軽い閉眼
・頬をふくらます
・口をへの字にまげる
・強い閉眼
後遺症
早期では3ヶ月頃より後遺症が出現する場合がある
神経の絞扼が高度になると、麻痺の回復が遅れるとともに神経線維がワーラー変性を起こし、神経線維再生時に再生過誤が起こる
①病的共同運動一つの表情筋の運動が他の表情筋の運動を伴う
→閉眼運動を行うと同時に口唇が動く
口笛を吹くと閉眼してしまう
②ワニの涙食事時に麻痺側の目から涙が流れる
③痙攣・拘縮
治療
発症直後は顔面筋の安静および抗浮腫、抗炎症作用の目的で副腎皮質ステロイドを早期に開始する
・鍼灸治療は、末梢性顔面神経麻痺が対象になり、ベル麻痺の方が効果は出やすい
・血管の拡張や血液循環の改善に加え、神経の興奮を抑制することを目的とし、回復を早める
・後遺症は徐々に増悪し不可逆的であるとされているが、病的共同運動を軽減する治療法の一つに、表情筋の各部位に非同期による鍼通電療法を施行する方法が有効とされている
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