腰下肢痛(座骨神経痛)

腰部から下肢にかけての痛みやしびれ座骨神経痛と言われます。通常は腰部の神経根が圧迫などを受けて生じる場合が多く、頻度の高い疾患が椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症です。
椎間板ヘルニアは若年~中年にかけて、脊柱管狭窄症は中高年以上に発症し高齢化に伴い増加傾向にあります。

①椎間板ヘルニア

椎間板とは、軟らかいゼリー状の髄核とそれを取り囲んでいる線維輪とで形成され、圧を弾力的に受け止めるクッションとして働きます。
椎間板に反復性の負荷が加わり、髄核が本来の位置から飛び出した状態をヘルニアといい、神経を圧迫し炎症が起ることで下肢にしびれや痛みが出現します(座骨神経痛)。
20~40代の男性に多く、好発部位はL4/5、L5/S1
危険因子として、職業上の負荷、脊椎損傷の既往、振動、喫煙、遺伝的因子である
脱出したヘルニアの高位や、脱出方向により症状は異なる。
一般的な症状は、腰痛および片側性の下肢放散痛、しびれ、障害神経根の支配領域の知覚・運動障害など、 特に前屈時痛があるため、顔を洗ったり、靴下の着脱などで痛みやしびれが誘発する場合が多い。
自然軽快が期待できるので、保存療法が適応になる

②脊柱管狭窄症

加齢に基づく退行変性によって脊柱管が狭小化し、神経根や馬尾神経を圧迫して座骨神経痛が出現する
中高年以上に発症し、立位・後屈で痛みやしびれが増強し、座位・前屈で軽減される
一般的な症状は、下肢の痛み・しびれ・脱力感、間欠性跛行である


~間欠性跛行の定義~
安静時には症状はないが、立位や歩行により下肢に痛みやしびれ、脱力感が生じ、歩行障害が出現
するが、前かがみの姿勢にて症状が消失・軽減する


~脊柱管狭窄症と閉塞性動脈硬化症との違い~
・脊柱管狭窄症による間欠性跛行は立位や歩行時に痛みが出現し、歩行を中止したあと、前かがみ
の姿勢(しゃがみ込む・座る・腰を曲げるなど)にならなければ楽にならない
・閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行は歩行を中止し、立っているだけで楽になる



*神経根型:主に片側の下肢痛
*馬尾型:両下肢・陰部などのしびれ、脱力感、知覚異常(痛みは伴わないことが多い)
*混合型:両方が合併したもの


神経根型は軽快傾向を示すことが多いので保存療法を、馬尾型は徐々に進行し麻痺や膀胱・直腸障
害が出現する場合もあるため手術療法が適応のことが多い

膀胱・直腸障害とは馬尾神経の圧迫症状
・膀胱障害→排尿困難から始まり、尿閉、尿失禁へと進行する
・直腸障害→便秘が多く、進行すると失禁状態になる


無理をせず長時間の立位や歩行を避け、症状が出ないよう日常生活を工夫することが大切!

③梨状筋症候群

梨状筋の筋膜炎や筋痙攣によって坐骨神経が圧迫され座骨神経痛を発症する。
女性に多く、歩行中のひねり、長時間の立位、股関節の外転など軽微な誘因で発症することもある
一般的な症状は、梨状筋部の圧痛、殿部から下肢にかけての痛みやしびれである

④変形性脊椎症

加齢による椎間板の変性を基盤とし、椎体の変形、靭帯の過緊張・肥厚、椎間関節周囲に骨棘が形成されることにより神経根を圧迫し発症。一般的な症状は、後屈時痛、下肢痛、しびれ、起床時痛、動作開始時痛、同一姿勢による増悪である

⑤脊椎すべり症

椎間関節症性変化、骨棘形成による椎間孔の変形、分離症の合併などにより発症する。
分離症の発症年齢は成長期が多いのに対し、すべり症は40歳代に好発する
一般的な症状は、後屈時痛、下肢痛、しびれ、 他覚所見として階段状変形(L4/5、L5/S1に好発)がみられる。

障害神経根の脊髄レベル別症状

高位 障害神経根 知覚異常 反射減弱・消失筋力低下支配神経
L3/4 L4 下腿内側 膝蓋腱反射大腿四頭筋
L4/5 L5 足背
下腿前外側
正常前脛骨筋
長母趾・長趾伸筋
深腓骨神経
L5/S1 S1 下腿後側
足底
足部外側
アキレス腱反射下腿三頭筋
長母趾・長趾屈筋
腓骨筋群
脛骨神経
浅腓骨神経
鍼灸治療の目的

*腰椎周囲の多裂筋・回旋筋を含む脊柱起立筋・腰方形筋・腹斜筋・腸腰筋などの
筋の過緊張緩和

*また障害されている神経の循環動態の改善、閾値の上昇により痛み・しびれの回復

当院では坐骨神経痛の患者様は多数来院されております。
坐骨神経痛の原因は多岐にわたりますが多くの患者様に良好な治療成績を残して
おり最も得意の治療の1つでもあります。

★ぜひわからないことがありましたらお気軽にご相談して下さい。


症状が持続・増悪したり麻痺や、膀胱・直腸障害があれば、一度専門医への受診をお勧めしております




 

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