頚部痛

頚椎症

・中高年者に多く、頚椎椎間板の退行変性が基盤となり頚椎間の狭小化や頚椎の変形、骨棘形
成により、周囲の靭帯や筋が過緊張を起こし、脊髄、神経根、交感神経を刺激・圧迫して様々な
症状が出現する
・頚椎症性は一番負荷のかかるC5/6に多い


*関連痛型・・・肩こり、頚肩部・肩甲間部痛
特に頚椎の後屈や後斜屈時に疼痛が出現するが、手指の痛みやしびれは生じない


*神経根型・・・後頚部・肩甲骨部の疼痛、上肢への放散痛、手指のしびれ
頚椎の後屈や患側への側屈で頚から指先にかけて電撃様の痛みやしびれ、上肢の異常知
覚、筋力低下、深部腱反射減弱・消失をきたす場合がある


*脊髄型・・・巧緻運動障害、痙性歩行障害
・発生頻度は少ないが、症状は重篤
・しびれで発症することが多く、両側性になり上肢の重だるさ、指先のこわばり、脱力感が生じ、下肢へとしびれ感は拡大する
・上肢の異常知覚、筋力低下、深部腱反射亢進、病的反射陽性

巧緻運動障害→ボタンをはめる、箸を使う、書字などが困難
母指球・小指球・骨間筋などに筋委縮がみられることが多い


*バレー症状型・・・頭痛、めまい、かすみ目など
・頭部回旋時に発作性にめまい、耳鳴り、視力障害、一過性の失声、頚部深部の不快感、易
疲労性などを生じる(交感神経の障害)
・椎骨動脈神経(交感神経)が頚椎の側屈、後屈、回旋によって刺激され、動脈痙攣を起こし脳底血行が障害される
・交通事故によるむち打ち損傷の既往がある人に多い

頚部椎間板ヘルニア

・頚部椎間板が脱出し神経根や脊髄を圧迫し炎症が起こり発症する
・男性に多く、40~50歳代に好発する
・神経根型の方が多く、好発高位は神経根型ではC6/7が60~70%、脊髄型ではC5/6が約50%
・障害高位により上肢の知覚、筋力、反射に異常がみられる


*神経根型(外側ヘルニア)
後側方の椎間孔入口部に発生すれば、神経根を圧迫、刺激して項・背部や上肢への放散痛やしびれ、脱力、筋萎縮や筋力低下などがみられる
頚椎の屈曲で症状が誘発・悪化することが多い


*脊髄型(正中・傍正中ヘルニア)
後方の脊柱管中央に発生すれば、脊髄を圧迫して四肢と下半身のしびれ、こわばり、運動麻痺、膀胱・直腸障害などを生じる
体幹部や下肢に異常知覚や運動障害がみられる

胸郭出口症候群

・頚肋症候群、斜角筋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群の総称
・定義→腕神経叢が胸郭出口部において圧迫あるいは牽引的刺激により神経過敏状態となり、頚・肩・腕のしびれを引き起こした状態
・神経性(95%)と血管性がある


先天的要因・・・頚肋の存在(C7横突起の残遺の肋骨が異常に発達したもの)
前斜角筋と中斜筋の第1肋骨における付着部の間隔の狭小、肋鎖間隙の狭小など


外傷性要因・・・外傷性頚部症候群(むち打ち損傷)、交通外傷、スポーツ外傷など一撃的な強い外力
上肢の繰り返し作業、頚を繰り返し動かす職種の蓄積的外力(VDT症候群など)


非外傷性要因・・・頚の長いなで肩の不良姿勢の女性では肩甲帯が下方に下垂しやすくなっており、上肢が下方にひかれるために腕神経叢の牽引により症状が発現する

末梢神経の二重挫傷症候群→肘部管症候群や手根管症候群などの末梢神経絞扼の合併がみられる(30~40%)


腕神経叢圧迫型・・・男性に多く(2:1)、筋肉質で怒り肩を呈する
上肢挙上により症状の再現と増悪を認め、鎖骨上窩における圧痛や上肢への放散痛がある


腕神経叢牽引型・・・女性に多く(1:6)、なで肩・円背で不良姿勢を呈し、肩甲骨の易下垂性がみられ、若年者に多い
上肢下垂時に症状が強く、上肢下方牽引により増悪



症状のタイプ

①上肢の痛み、しびれ、だるさなどの上肢症状(尺骨神経領域が多い)

②肩・肩甲骨周囲のこりと痛みを伴う

③頚部のこりと痛み、背部痛が主体で、上肢症状が軽度

④これらの症状に加えて頭痛、立ちくらみ、不眠、嘔気、胃腸障害、全身倦怠感などの不定愁訴
を伴う(自律神経の障害)
全体の約1/4を占める

外傷性頚部症候群 (むち打ち損傷)

・交通事故等の際に、頭部に働く慣性力によって頚部の骨・関節・靭帯・筋・椎間孔などに損傷をきたし、頚部痛を訴える疾患
・頭痛、頚部痛、運動制限が3大症状
・年齢やシートベルト着用の有無との関連性はない
・受傷直後の症状は頻度が少なく、初発症状は受傷後数時間から翌日になって出現することが多い
・事故による心理的な影響も多く、慢性化する場合がある


受傷機転
1.頚椎が強制的に可動域を超えて、屈曲・伸展・側屈、捻転して損傷したもの
(直接外力が作用)

2.体幹に加速度あるいは減速度的な力が加わることで、
慣性の法則により頚椎がむちのようにしなり、過伸展と過屈曲が生じて損傷したもの


①捻挫型・・・後頭部、頚部、背部のこりと痛み

②神経根型・・・上肢から手指のしびれと痛み、脱力

③脊髄症型・・・下肢の痙性麻痺

④バレー・リュー型・・・めまい、目のかすみ、耳鳴り耳閉感など


*短期間(3日間)の頚椎カラー装着での安静、早期の運動療法の開始が予後良好

鍼灸治療の目的

・神経症状(痛み・しびれ)に対しては神経閾値の上昇および神経血流の増加を目的とし、上肢の痛みやしびれを抑える

・鍼灸治療を疼痛部位や頚肩部~背部へ行い、圧痛や筋の過緊張緩和を目的とする(僧帽筋、板状筋、肩甲挙筋、菱形筋、棘上筋など)


・後屈・側屈時痛および椎間関節部に圧痛がみられる場合には椎間関節への刺鍼を行う

・バレー症状型は頚肩部や背部だけでなく、自律神経症状の刺鍼も同時に行い全身の調整をしていく

・中枢神経の障害である脊髄型は損傷してしまうと治癒は難しく、巧緻障害なども鍼灸の効果はあまり期待できないが、頚肩部のこりや痛みに対しての鍼灸治療を行い、直後効果として一時的に疼痛の軽快がみられるためQOLの面からは有用である


★その他、わからないことがありましたらお気軽にご相談して下さい。

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